帯の代表的な種類のひとつ袋帯。
袋帯は主にフォーマルな場面で礼装用として用いられます。
しかし、素材感や色柄によっては礼装よりもカジュアルダウンした装いにも。
現在、桝屋髙尾で主に生産しているのはこの袋帯です。
そこで今回は、前回ご紹介した名古屋帯とも比較しながら袋帯について解説していきます。
▼ 名古屋帯についての解説はこちら!
目次
袋帯とは?
袋帯とは、袋状の形をした帯のこと。
袋状とは表地と裏地が筒のような形でつながっている様子を指します。
袋帯の種類は「本袋帯」と「縫袋帯」の2つ。
元々は表地と裏地が繋がった袋状の形で織り上げる「本袋帯」が主流だったそうですが、現在では表地と裏地を別々に織り上げ、後から帯の両端を縫い合わせる「縫袋帯」が多く生産されています。
京都西陣では帯の裏側が上になる状態で製織作業が行われ、鏡を使って時折表側の状態を確かめながら織り進めます。(「織裏」と呼ばれる織り方です。)
「本袋帯」は先に記述した通り、表地と裏地が繋がっている袋のような状態で織り上げるのが特徴。
さらにこのとき、帯の表側は袋状の内側に入ります。つまり、縫袋帯のように鏡を使って表側の様子を目で確かめることが出来きません。
ここでは帯の寸法よりも短く織った見本裂を使って本袋帯について解説していきます。
❖ 帯の裏側が上になる状態で織り進めます
❖ 袋状に織り上がった様子。柄は内側に入っています
❖ 織り上がった後、袋状の帯をひっくり返すことで初めて柄を確認出来ます
このように「本袋帯」は職人さんの経験や勘が織り上がりを左右する非常に繊細な織物なのです。
そういった訳で、「本袋帯」よりも織りやすい「縫袋帯」がだんだんと多く織られるようになりました。
「本袋帯」のメリットとしては帯の両端に縫い目が無い為、ごわごわせずにスッキリとお締めいただけること。
桝屋髙尾でも「本袋帯」は人気が高く、現在でも大事に織り続けている織物です。
しかし、かといって「縫袋帯」の価値が低いかというと必ずしもそういうわけではありません。
「縫袋帯」でも手織のものや柄のつくりによっては「本袋帯」よりも高価なものも。
また、呉服屋さんなどで陳列される際は「袋帯」と大きくカテゴリされていることが多いようです。
「本袋帯」と「縫袋帯」の違いを知っておくと、ちょっとだけ「通」な気持ちを味わえるかもしれません。
帯選びの参考にしてみてくださいね。
ちなみに、袋帯の誕生以前は帯といえば「丸帯」が主流でした。
「丸帯」とは幅の広い帯地をふたつに折り、片側だけを縫い合せて仕立てる帯のこと。
仕立て上がりは表にも裏にも柄が織り込まれている豪華な仕様になるので、昔の礼装用の帯といえば「丸帯」を指していました。
しかし、高価で重く扱いにくい「丸帯」は時代と共に廃れていまい、現在は礼装用の帯といえば「袋帯」が主流となっています。
「丸帯」は完全に無くなってしまったわけではなく、主に花嫁衣裳である白無垢や舞子さんが使う帯として作り続けられています。
袋帯の仕立て方
袋帯(ここでは「縫袋帯」を例にします)はまず、「仮仕立て」と呼ばれる仕立てを行います。
「仮仕立て」とは帯の表地と裏地の両端を縫い合せ、袋状に仕上げること。
その後、お客さまのお好みに合わせ「本仕立て」の工程へ。
先ほど「仮仕立て」のことを記述しましたが、『仮』といってもこの時の縫製は「本仕立て」でもそまま活かされます。
「本仕立て」とは袋状の帯に帯芯(帯の締め心地を良くする為に帯の中に入れる厚手の生地)を入れて帯の口を閉じることです。
このとき、帯の素材やお好みによっては帯芯を入れない場合もあります。
この「本仕立て」の仕立て方の種類は主に2通りです。
◆ 関西仕立て
関西仕立てとは界切線(帯の端にある線)が見えるように仕上げる仕立て方。
主に関西地方で、帯のタレが擦れても仕立て直せるようにと界切線を出して仕立てていたことが始まりのようです。
現在では界切線ギリギリで仕立てる方法が多く見られます。
また、界切線はただの直線だけでなく、織屋さんや柄によって個性的なものも多くあり、あえて見せるオシャレを楽しまれる方もいらっしゃいます。
◆ 関東仕立て
関東仕立てとは界切線が見えないように帯の内側へ入れて仕上げる仕立て方。
現在では関東仕立てが主流で、わたしたちも特にご希望がなければ関東仕立てにて承っています。
また、呉服関連の東西の違いは帯の仕立て以外にも帯の締め方などにも見られます。
着物が普段着として着られていた当時は今のように簡単に情報が拡散されない時代。
それぞれの地域に根付いた文化が日々の装いにもダイレクトに反映されていたのかもしれませんね。
袋帯と名古屋帯の違いって?
◆ 違いその1 ~長さ~
袋帯と名古屋帯の違いのひとつは帯の長さです。
袋帯の長さは1丈1尺~2尺(約420~450cm)ほど。お太鼓の位置は3尺5寸(約133cm)です。
対して名古屋帯の長さは1丈2尺5寸~1丈3尺(約475~495cm)ほどですが、仕立ての際は手前の無地部分3尺(約120cm)ほどを折り返して仕上げます。
仕立て上がりの長さは約9尺5寸~1丈(約360~380cm)。お太鼓の位置は1尺8寸(約69cm)です。
(名古屋帯の詳しい仕立て方はこちらでもご紹介しています!)
帯の織り上がり寸法は織屋さんによって多少前後することもございますので、あくまで目安として捉えていただけたらと思います。
また、アンティーク品やリサイクル品の場合はつくられた年代によって寸法の違いがある場合も。
きちんとご自身に合った寸法であるかどうか確認されることをおすすめします。
※ ここでの帯の寸法は全て鯨尺を使用しています。
◆ 違いその2 ~見た目~
・仕立て前の状態
一目で違いがわかるのはその見た目。
実際に写真で見比べてみましょう。
どちらも仕立て前の状態です。
袋帯は平らな状態。
一方名古屋帯は前無地部分を折り返して仮止めし、くるくると巻かれています。(織屋さんや呉服屋さんではこの状態を「丸巻き」と呼んでいます。)
名古屋帯も仕立てると平らな状態になるので、仕立て上がりの状態で見比べる場合は仕立て方や先に記した寸法の違いを参考にしてみてください。
・帯を締めた状態
袋帯と名古屋帯は実際に締めたときの見た目にも違いがあります。
寸法が長い袋帯はお太鼓(帯を結んだときに背中に出る部分)の帯地が重なった状態になるので「二重太鼓」と呼ばれています。
慶事などの際は「良いことが重なるように」という願いも込め、袋帯を締めるのが一般的です。
一方、寸法の短い名古屋帯はお太鼓部分が重ならない「一重太鼓」。
袋帯に比べて軽くて締めやすい名古屋帯はお出かけ着などのカジュアルな装いにおすすめ。
また、お葬式などの場面では「不幸が重ならないように」という意味を込めて名古屋帯を締めるのが一般的です。
▼ フォーマル着物についての解説はこちら!
京都西陣 織り屋のおすすめレンタル帯
袋帯は主にフォーマルな装いで使われますが、素材や色柄によって幅広くお使いただける帯でもあります。
桝屋髙尾の帯の締め心地を体験していただける帯のレンタルサービス「RENTOBI」の中から用途別におすすめの袋帯をご紹介します。
◆ 個性が光るフォーマル帯
金と銀の龍が交差する迫力のある柄が特徴の帯。
龍はお太鼓ではなくお腹部分に現れる柄ゆきになっています。
こちらの帯は女優の寺島しのぶさんや仲間由紀恵さんにもご着用いただきました!
▼ 帯の詳細はこちら
◆ 職人技がぎゅっと詰まった本袋帯
こちらは「本袋帯」。
桝屋髙尾の中で長く織り続けている柄のひとつです。
縞模様を織り出す「縞経」を採用しており、茶色い地色に緑と赤の縞がアクセントに。
時代を越えて愛されている1本です。
こちらはお茶席やお出かけ着などのカジュアルな装いにおすすめ。
◆ 遊び心溢れる柄を楽しむ「ねん金」の帯
こちらは楽しくカジュアルにお使いいただきたい1本。
モザイクアートのような七宝模様が特徴です。
桝屋髙尾をご存じの方は『桝屋髙尾の「ねん金」の帯と言えばフォーマル』というイメージが強いかもしれません。
もちろん煌びやかなフォーマル帯は大得意ですが、実はこのようなカジュアル寄りの帯も多く制作しています!
また、「ねん金」の帯はギュッと締めやすく、シワが付きにくいというメリットも。
「桝屋髙尾」をご存じないとう方もまずはレンタルにてその締め心地をご体験ください!
帯のレンタルサービス「RENTOBI」では、ただ帯をお貸出しするのではなく、コーディネート相談も一緒にお受けしております。
不安を解消しながら帯選びが出来るとご好評頂いているサービスです!
※ ページ下部のお問合せフォームをご利用ください。
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